第1話 系統王抹殺計画、始動
俺の名前は、美化 金斜
都内の高校に通う、いたって普通の高校生だ。
今日もいつも通り繰り返されるだけの何気ない日常…
正直俺はうんざりしていた。
勉強も出来てスポーツ万能、またクラスの女子がこっちを見て噂話をしている。
正直、満たされてはいる…だけどこのまま大した刺激もなく、同じ様な毎日を死ぬまで過ごして行くんだろうな、そう思っていた…
あの時までは。
3限目、数Bの時間
授業なんて受けなくてもテストは大体学年3位以内には入れる。
そんな自負が俺を深い眠りへと誘っていた。
「えーそれじゃ、佐藤、この問題解いて。」
「す、すみません、分かりません」
寝ながらにも薄っすらと頭に入ってくるいつも通りのくだらない質疑応答。
佐藤はこんな問題も分からないのか、寝てる俺でも分かるよ…ていうか教師ももう少しまともな奴をさせよ…
「系統王を駆逐セヨ…」
………⁇
なんだ、今のは⁇
「系統王を、駆逐セヨ‼︎」
ガバッ‼︎
「どうした?美化?」
「すみません、先生なんでもありません…ト、トイレ行ってきます!」
ったく、なんだよあのやけに現実感のある夢の声は…お陰で恥かいたよ…SNSでもイジって落ち着いたら教室戻るか…。
てーて てってーててーて ててー てててーん♪
大音量の電子音、なんだこの音楽…
それに画面がホームに戻らない…
あぁ、あのいつもテストじゃ学年最下位のバカみたいなヤツらが無駄な時間と金を掛けてる携帯ゲームか…
くだらない…そもそもなんでこんなゲームが俺の携帯に?
「きゃーっ‼︎」
「なんだアレは、空からこっちに来るぞー!」
その時だった、さっき居た教室から悲鳴や怒号が飛んでくる。
「ど、どうした?」
急いで教室に戻った俺の視界に、とんでもないものが飛び込んで来た。
窓越しに遠目でもハッキリと目視出来る、こちらに向けて飛来する3匹の怪物たち…
1匹は、丸い体に羽が生え優しい顔をした銀色の怪物。
2匹目は、同じく丸い体、だけどその顔は顔とも取れるが模様ともとれる、とにかく悍ましい見た目をした黒い怪物。
3匹目は、緑色の大きな体、そして視点が合っていないっ!
「どうしよう…」
「俺たちここで殺されるんだっ…」
「お前ら、落ち着け!」
言ってる俺が1番落ち着いていない…クソっどうすれば…
てーて てってーててーて ててー てててーん♪
その時だった、さっきと同じ電子音が教室中に鳴り響く。
クソ、こんな時にまたさっきのゲームが…
「私の名前は…」
…??
さっき夢で聞こえた声と同じ声?
「私の名前は運営神シーヴァ」
シ、シーヴァ?
「そう、今目の前に迫る3匹の怪物は、我が第3宇宙の課金戦争によって産み出された、悍ましき怪物達なのだ。」
何言ってんだよ…
「そもそも、なんでその第3宇宙とやらの怪物が、こんな平和な世界にやって来たんだよ⁉︎」
「それは、本来我が第3宇宙に3つの世界、廃課金ランド、微課金スカイ、無課金シーの秩序が、あの3体の怪物によって乱され、結果、この世界と我が第3宇宙の間に存在する結界が壊されてしまったからに他ならない…」
「何言ってんだよ、冗談じゃねぇ」
「もし、それが本当ならどうすれば良いんだよ、そもそもなんで俺にそんな事を…」
「さっきから、あなたの携帯に出て来るゲーム、そのゲーム内であの3体の怪物達を見事に撃破すれば、あの怪物達は消えるだろう。」
「く、くだらねぇ…そんな事本当にあるわけ…」
「だったら、目の前の現実はどう説明する?そして、この声は?」
確かに、言われてみればその通りだ。
シーヴァとやらの言ってる事はまるで現実感が無い…だが、既にこの両目にも耳にも、現実感の無い現実がハッキリと飛び込んで来ている…。
「分かったよ…シーヴァ、お前の言った通り、あの3体の怪物達をぶっ倒してやろうじゃねぇか‼︎」
こうして、俺の何気ない、死ぬまでいつも通りだったはずの日常は、幕を閉じた…。
「まず俺はどうすれば⁇」
「ふむ、それではそのゲームを開いて闘技場からマスターズGPの画面を選択するんだ」
「こ、これか?」
「そうだ、このPTは比較的無課金、微課金でも揃えやすい、討伐2体、Bスタ1体、昔のSスタ1体に、昔の魔王1体から編成される、通称、系統王駆逐部隊だ…!」
系統王駆逐部隊…?
「ちょっと何言ってるか分からないけど、こいつらであの3体の怪物達を倒せば良いんだな?」
「左様、まず系統ボーナス無しの物質軍が迫って来てるぞ…奴らを倒すんだ!」
「オーケイ!サポート頼んだ!」
「先ずはキラーマジンガを守れ!そいつのピオラを守り切り2ラウンド目を迎えた方に勝利は訪れよう!」
「わ、分かった」
本当だ…このキラーマジンガを狙って敵が何かを打ってきた…
「次は何を?」
「ドレアムで相手の仁王立ちを剥がすんだ!」
「了解!」
「そして、間髪入れずブレードゼロで相手にダメージを入れつつ、倒されたディアノーグによって付与されるバフもろとも、相手のバフを全て剥がしてやれ!」
「こうか…?」
「ふむ、だが油断するな…これからが最終局面だ…次の相手の攻撃で身代わりが剥がれないない事を願うのだ!」
「挫けるな…俺の心ーッ!」
「や、やった…耐えた…」
「ふむ…トドめだ。」
「か、勝ったのか…?」
「あぁ、よくやった。」
「なんだ、楽勝じゃないか!」
「図になるなっ!!」
「この物質PTは系統ボーナスが付与されていない、謂わばかませ犬の様なもの」
「それに、たまたまヘビーマジンガリーダーだから良かったものの、相手がダークマターリーダーだったら?ディアノーグが初手まどいの叫びだったら?ダークマターが☆44の速度からキラーコマンドを打って来ていたらッッ!」
「わ、わりぃ…調子に乗ってた」
なんかよく分からないけど、これは運が良かっただけって事なのか…。
「本当の戦いはこれからだッ、心してかかれ!」
「あぁ…」
「早速来たぞ、アレが系統王ゴッデス率いる、スライムPTだ」
「スライムパ…」
「ただ、耐久の穴埋めにハーゴン、ダメバリ役に甲冑アリが居る辺りを見ると、恐らく敵は無課金レベル…
しかし系統ボーナス20%付与によりその耐久値と火力は本来の☆4以上だ!心してかかれ」
「先ずは全力でゴッデスを狙っていけ!2ラウンド目にヤツが生きていればPTの耐久力は1.2倍になる」
「分かった…」
「か、固いっ…」
それに、回復してやがるッ…
「まだ諦めるのは早いぞ!サイコキャノンでとにかくゴッデスを削るんだ!」
「あぁ、了解!」
「そこだっ、止めろ!」
「後は、固定ダメと魔法で削るのだ!」
「こ、こうか??」
「なんとか、勝った…」
「うむ、ただ系統ボーナスが乗ってるとはいえメタルスターやダイスラの居ないPTにここまで苦戦するとは…先が思いやられる…。」
「うるせぇな、勝ちは勝ちだろ!この調子で後1体も…」
「言えるかな…」
「えっ…」
「ヤツを前にして、それが言えるかな?」
「来たぞ…ヤツだ!」
アレはさっきの緑の怪物…やっぱり、視点が合っていないッ!
「初ラウンド、巨竜以外は守れ!そして巨竜でクジラを止めて、次のラウンドでマジンガでバリアを確実に剥がし、ドレアムと巨竜でガラ空きのボディに思い切りぶち込むんだ!」
「分かったぜ!」
ダメだっ…浅い…まるで分厚いタイヤを殴ったみてぇな…
ここまでかっ…
あれっ思ったより、痛くない…
「そうだ、ヤツの大自然の怒りは防御依存…絶技によって下げられた防御力では、4ラウンド目までは大した火力は出ない」
「そ、そういう事か…ならこの勝負、次ラウンド相手がバリアを貼ろうとマジンガからの最速剥がしでガラ空きの所に絶技とサイコキャノンを打ち込んで…勝てる…!」
「ようやく分かって来たな…」
「予想通りだ…だがこっちには」
「えっ?」
「えっ?」
「グラコスのしっぷう突きだ…普段使われてないがために、その特技や能力や特徴を見誤り、コマンドミスを招かせる様なモンスターを輝かせるというのも、系統王のまた一つの力だ…」
「俺は…負けちまったのか…この世界は、救えないのか…」
「あぁ…残念だが…」
「チックショーーーッ」
ガバッ‼︎
「どうした?美化?」
「えっ、いや、その…」
キンコーン、カンコーン…
「まぁいい、これで授業を終える、宿題忘れない様に。」
空にあの化け物達の姿は無く、いつも通りの晴れた空が広がっていた…。
俺が見た夢はなんだったんだ…。
あ、そんな事よりLINEのグルチャで今日の合コンの詳細送んないと…
えーっと、携帯、携帯っと…
てーててってーてててーっててーん♪
ん?この音楽、どこかで…
END
という事で今回は系統ボーナス付与の自然PTには惜しくも負けてしまった美化君、続くかは分かりませんが今後の活躍に期待ですね。
そんな事より仕事の合間とは言え、私は何にこんな時間を費やしているんでしょうか。
全てが美化君の様に夢であってくれる事をねがいます。
終わります。